ご案内
べつに慌てるような事態ではないはず。
「えっと、私はですね、Iさんのお嬢様とは面識がありません。
どんな方なのかもわからないのに、いきなり結婚をしろというのは、少々問題ではないでしょうか」「少々の問題だったら、なんとか堪忍してもらえないか」。
「いえ、言葉の綾で申し上げましたが、正確に言いますと、大きな問題です。
致命的な問題と「いえいえ、そんなねばり強くされる必要は全然ありません」私は両手を広げて言った。
「常識的に考えて、無理があると思います」「うーん、もう一度きくが、駄目かね?」「駄目だと思います」「だと思いますっちゅうのは、なにか煮え切らない気持ちがあるように推察されるが」「うーん、そうか、駄目かぁ…」Iさんは腕組みをして吃った。
「いやあ、君ならばと思ったのであったが、やはりな、こういうことになると、機械のようにはいかんっちゅうこった」「駄目です」「うーん、そのとおりだと思います」。
まあ、僕もね、今日一日の説得だけで、ぽんとことが運ぶとは考えておらん。
こういうだな、ねばり強い交渉によって初めて道が開かれる。
うん、これは肝に銘じておかねまあ、親の欲目かもしれんが、それはそれは可愛らしい子でなあ、君も娘を一目見れば、大いに気に入ると思うのだが」。
「いえ、あの、私はまだ、そんな結婚なんか全然考えてもおりません。
だいいち、現在のこんな生活では、一人で暮らすのがやっとでして」「いや、経済的なことは心配せんでよろしい。
僕に任せておきなさい」「いえ、間違いました。
今のは断る理由としては不適切でした」「まあ、どうだい?一度、会ってみては」「いえ、それは、しかし…」「会うのも駄目だという理由はないだろう」「でも、その、前提としてですね…」「まあまあまあまあ」Iさんは片手をふる。
「人生これ成り行きというではないか」「いえ、そんなの聞いたことありませんけど」「転がる石の如くだね、逆らわず、流れ流される、これこそ、男の生き様というもんだわな」。
「なんか、もの凄くいい加減なことをおっしゃっていませんか?」こんなやり取りがあった。
私としては、その場をなんとか凌ぎさえすれば良い、という安易な気持ちがあったかもしれない。
客とはいえ、Iさんとは既にそうとう親しくなっていたし、かなり言いたいことが言える間柄にはなっていただろう。
不動産投資を余すとこなく分析しました。他に例をみない不動産投資です。
